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再審制度の課題が浮き彫りに…「布川事件」国賠訴訟、画期的判決に隠れた問題点
茨城県で大工の男性が殺害された「布川事件」(1967年)をめぐり、冤罪被害者の桜井昌司さん(72)が起こしていた訴訟で、東京地裁(市原義孝裁判長)は5月27日、国と茨城県の責任を認め、桜井さんに約7600万円を支払うように命じた。
特徴的なのは、検察の「証拠隠し」に言及したことだ。判決は、二審で弁護人が開示を求めた「捜査報告書」や「供述調書」について、検察が開示を拒んだことを違法とし、開示されていれば、二審で無罪が出ていた蓋然性が高かったとした。
冤罪事件の「再審」に取り組む鴨志田祐美弁護士は、この判決について「証拠開示義務をうたったという点では、エポックメイキング」と評価。一方で「再審の部分になると、急に腰が引けている」とも指摘する。
桜井さんは無実の罪で29年間自由を奪われた。再審無罪判決の確定は事件から40年以上たってから。「袴田事件」の袴田巌さんのように、気の遠くなるような時間と労力をかけても、なお無罪確定まで遠いのが再審の現実だ。
判決から、再審をめぐる課題を見ていきたい。
「ラブライブ!」ファン困惑、無関係の第三者が「ラブライバー」商標出願…「ゆっくり茶番劇」騒動の再来
アニメや映画などで人気の「ラブライブ!」のファンの間で困惑が広がっている。「ラブライブ!」のファンを表す言葉「ラブライバー」の商標出願が、無関係の第三者によっておこなわれたことが8月、判明したためだ。
ネットでは、ラブライバーたちから「ラブライバーを名乗るとお金を取られる?」という不安が上がっているほか、ネットで親しまれてきた言葉だけに出願に対して批判も強まっている。
また、「ラブライブ!」シリーズのプロジェクトを手がけるバンダイナムコフィルムワークスは、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「ファンの皆さまに不安を招くような事態となっておりますことを大変遺憾に存じます」とコメントしている。
ネットから生まれた言葉で現在もファンに使われている「ラブライバー」の商標出願に問題はないのだろうか。
紀藤弁護士「会見、訴訟…旧統一教会の迷走はカルトそのもの」「いまが国の正念場」
安倍元首相の銃撃事件以降、紀藤正樹弁護士の姿をメディアで見ない日はない。ツイッターのトレンド入りは十数回以上。第一線で世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害に向き合ってきた法律家として、発信を続けている。
教会側は、紀藤氏らの発言に名誉を傷つけられたとして提訴したり、記者会見を開いたりして自身の正当性を強調している。時にヒートアップして怒り出す幹部もいる。メディア戦略にたけた紀藤氏は冷静に受け止め、こう解説する。
「彼らの表情が同じこと、怒るトーンが一緒であること、世間の常識から遊離してしまっている事実を、面白がるのではなくて正面から受け止めてください。不安や恐怖によって人間本来の感情を押し殺した人たちの共通した姿です。カルト被害の実態そのものなのです」
30年以上闘ってきた彼らの解散請求も視野に入ってきたが、紀藤氏は「欧米に比べて周回遅れだった日本が、やっとカルト対策に向き合う時にきた。先進国並みに到達できるか今が正念場です」と気を引き締める。
「建材メーカーも資金拠出を」建設アスベスト給付金法の〝残された課題〟を研究者ら指摘
「建設アスベスト給付金法」の成立を受けて、研究者や弁護士らの団体が6月16日、建材メーカーも資金を拠出すべきなどとする提言を発表した。
建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み肺がんや中皮腫などになったとして、元作業員らが起こした「建設アスベスト訴訟」は今年5月、最高裁が国や建材メーカーの責任を認めた。
判決を受けて6月9日に成立した同法は、症状の程度に応じて550万円~1300万円を支給するもので、裁判を起こしていない人も救済の対象としている。
アスベスト関連の病気は潜伏期間が長い。政府は今後30年間に発症する人も含めて、支給対象者を約3万1000人、支給総額を4000億円と推計し、基金を創設する。
立命館大名誉教授の吉村良一氏(民法・環境法)らが共同代表を務める「石綿被害救済制度研究会」は提言の中で、同法で給付が損害賠償としての性質を持つことが明記されたこと、つまり責任の所在を明確にしていることなどを評価しつつ、残された課題を指摘した。
以下、大きく2点を紹介する。
(1)最高裁で責任が認められたのに、建材メーカーの関わり方が盛り込まれていない。建材メーカーはアスベストで利益を得ていたのだから、アスベストの使用量を調査し、その量に応じて基金に資金を拠出すべき
(2)同法では、屋外作業者が対象外となっている。作業実態を考えると、屋内と屋外でアスベストにばく露する危険性は大きく変わらない。司法判断で法的責任までは認められないとしても、行政施策としての救済制度では、すべての建設アスベスト被害者を対象とすべき
また、国の責任期間が限定されていることも問題視している。
「長期収容は拷問で、人間社会において異常なことだ」入管収容所で起きたハンストの意味
法務省の収容施設で、在留資格のない外国人の収容が長期化している。この問題をめぐっては、収容されている外国人たちが、食事を拒否する「ハンガーストライキ」(ハンスト)による抗議をおこなっている。だが、これまでに改善はみられていない。
こうした状況を広く知ってもらおうと、入管問題について考える有志のグループが8月4日夜、東京・新宿で「緊急街頭アピール」をおこなった。午後6時を過ぎても、気温は30度を超えていたが、街頭には約150人があつまった。(ライター・碓氷連太郎)
60代"痴漢"男性の追憶「あの感触は忘れられない」、批判覚悟で断言「電車の混雑なくしたら被害減らせる」
弁護士ドットコムが会員を対象にした「痴漢」に関するアンケートを実施したところ、多くの回答が寄せられた。そのほとんどが「被害者」からのものだったが、中には「加害者」だという人もいた。
痴漢をしたことがあると答えた9人はいずれも男性で、その中の1人が取材に応じた。
会社員の露木文憲さん(仮名・60代前半)は、東京で混雑した電車に乗り、女性への痴漢を繰り返したという。
電車の本数を増やしたり、出勤時間をずらしたりするなどの対策で混雑緩和させることで、社会から痴漢被害を減少させられるのではないかと指摘する。「また満員電車に乗ってしまえば自制できないだろう」と話した。
海外への不正送金にかかわる「マネーミュール」って、いったいなに?
自分の口座に振り込まれたお金を転送するだけで、お金がもらえます――。そんな怪しいメールが届いたら、注意したほうがよさそうだ。軽い気持ちで引き受けると、犯罪に問われる可能性があるからだ。
報道によると、犯罪収益の海外送金を手伝ったとして、宮崎県内の男性が9月中旬、犯罪収益移転防止法違反の疑い逮捕された。男性は今年3月、不正なネットバンキングで振り込まれた約213万円を海外に送金し、報酬として24万円を受け取ったとされる。男性はメールで送られてきた求人広告を見て、応募したのだという。
このように犯罪収益の海外送金を手伝う人を「マネーミュール」と呼ぶそうだ。あまり聞き慣れない言葉だが、いったい何なのだろうか。桑原義浩弁護士に聞いた。
人妻が「レズビアン風俗」に行ったら「浮気」になるの? 法律と風俗のエトセトラ
昨年、ある1冊の本が話題になりました。漫画家・永田カビさんが実体験をもとに描いた「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」(イースト・プレス)が出版され、「こんな世界があるのか」という驚きが広がったのです。私もその1人ですが、実際に行った人は身近にはおらず、体験談を聞く機会はありませんでした。
そのチャンスがめぐってきたのは、「Wの悲喜劇〜日本一過激なオンナのニュース〜」(AbemaTV)の収録でした(放送は、3月4日午前0時から。タイムシフト視聴もできます)。どのようなサービスがあり、どんな客がくるのか? 実際に客として通う女性たち、「キャスト」と呼ばれる従業員の女性、店長の4人に、司会のSHELLYさんが深く話を聞いていきます。
収録では、女性たちが口々に「SHELLYさんも行ったら?」と勧め、既婚者であるSHELLYさんが、たじろぐ場面も。実際のところ、既婚者が「レズ風俗」に行くことも「浮気」になるのでしょうか。「風俗店」や「同性との不貞行為」については、知らないこともいっぱいです。
収録に参加後、弁護士ドットコム社内の弁護士に色々と質問してみました。
【人妻が「レズビアン風俗」に行ったら「浮気」になるの?】
回答)田上嘉一弁護士(「弁護士ドットコム」ゼネラルマネージャー)
質問者)山口紗貴子(「弁護士ドットコムニュース」副編集長)
●質問1「風俗店って、法的な問題は?」
ーーまず、そもそも風俗店って法的な問題はないのか気になっています。
よく女性から聞かれる質問ですね。「風俗店は、そもそも違法だし、なぜお店が営業できるの?」などと根拠なく言う方もいますが、日本の法律は風俗店を認めています。
正確にいえば、「風営法の届け出を出し、規則にしたがった運営をしていれば、問題ない」となります。
実際には「店舗の営業形態による」とか「性風俗店といっても、多種多少なサービスがある」とか、指摘したいことはあるのですが、今回は触れずにおきましょう。
ーーいずれにしても、風俗店そのものが、違法というわけではないと
そうです。適切な手続きをして営業するかぎり、問題はありません。
ーーでは、レズビアン風俗など同性向けの風俗も、届け出をすれば問題ないのですね
いえ、そうではありません。実は、同性向け風俗は、法の抜け穴になっているんです。
ーーどういうことですか
いわゆる「風俗店」に関しては、法律上は「性風俗関連特殊営業」といいまして、店舗のサービス内容ごとに、風営法2条5項から10項で定められています。でも、これは基本的には異性を対象とした性的なサービスを想定しているんです。つまり、「同性向け風俗店」については、「現行法の対象外」ということになります。
ーーでは、法律上の届け出などは一切不要ということでしょうか
法律上はそういうことになります。もっとも実際には、女性向け風俗を男性が利用することも見据えて、届け出を出しているお店が多いと聞いています。
●質問2「風俗店に行ったら、浮気になるの?」
ーー相手が同性でも、浮気になるのでしょうか?
法律用語では、浮気を「不貞行為」といいます。最高裁の判例では、この不貞行為の定義を次のように定めています(昭和48年)。
「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」
これによれば、同性が相手でも「不貞行為になる」とは言えそうです。しかし、ここでいう「性的関係」とはあくまで異性との性交渉が想定されています。
実際に「夫に同性の恋人がいること」を理由に離婚を求めた裁判では、夫婦間で性生活がなくなっていたことや、同性愛であることを知ったことによって衝撃を受けたことなどが、「婚姻を継続しがたい重大な理由」にはあたると認めたものの、同性との性的関係そのものが「不貞行為」にあたるとは判断していません(昭和47年)。
ーーでは、「不貞行為」ではないのでしょうか。
いえ、当時とはLGBTに対する見方も変わってきています。
もし、僕が依頼者の方から「配偶者が、同性の恋人と性的関係を持っていた。離婚したい」と相談を受けたら、次のようにアドバイスしますね。
「判例では、同性との性行為が不貞行為にあたるとは認められていません。ですから、まずは『婚姻を継続しがたい重大な理由』にあたると主張しましょうか。それとあわせて、『いまの時代であれば、男女間であろうと、同性間であろうと、不貞行為にあたる』という主張をしましょう」
ーーレズビアン風俗には、既婚者のお客さんもいるそうです。既婚者の場合、風俗店でも「不貞」になってしまうのでしょうか。
法律は、風俗店の従業員を相手にした行為と、恋人などとの行為は区別して判断しません。時々、男性でも「風俗は浮気ではない」などと言う人もいるようですが、それはあくまで、その人の個人的な考えであって、法律が定めたルールではありません。
■『Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース~』
放送チャンネル:AbemaNews
放送URL&視聴予約はこちら:https://abema.tv/channels/abema-news/slots/92d5dTW6YzRuhq
「布川事件」二審も国県に賠償命令、検察の自白強要認める 桜井さん「涙が出そうになった」
茨城県で1967年に男性が殺害された「布川事件」で、冤罪により29年間自由を奪われた桜井昌司さん(74)が、捜査が違法だったなどとして国と茨城県に対して起こしていた国賠訴訟の控訴審判決が8月27日、東京高裁であった。村上正敏裁判長は、国と県に対して連帯して約7500万円の支払いを命じた。
判決では、警察だけでなく、検察も自白を強要する違法な取り調べをおこなったと認定した。
法廷で判決の読み上げを聞いた桜井さんは、「今までは裁判で勝っても、部分的に否定されてきた。54年前にされたことを初めて素直に認めてもらい、涙が出そうになった」とコメントした。
認容額は、仮釈放後の逸失利益の算定が変わり、一審の約7600万円からわずかに減ったが、弁護団からも「我々が書いた書面が読み上げられているのかと思った」など、「血の通った判決」「全面勝訴」だと高く評価する声が上がった。
なお、桜井さんは無実の罪で自由を奪われた刑事補償はすでに受け取っている。
勝訴した桜井さん(左から2人目)
刑事事件の被疑者を「留置場」から「拘置所」へ移せ――裁判所の決定はなぜ出たのか?
詐欺事件で逮捕され、勾留されていた男性の収容場所を、警察署の中にある「留置場」から、法務省が管轄する「拘置所」に移すよう、大阪地裁堺支部が決定を出していたと、4月2日に報じられた。
報道によると、決定は昨年12月10日付。勾留中の男性が警官から暴言を吐かれたとして、留置所から拘置所へ移すように、男性の弁護人が求めたという。裁判所は、留置場で録音・録画(可視化)がされていないことを理由に、移送を認めたのだそうだ。
このような裁判所の決定は異例だというが、留置場から拘置所に移されると、いったいどんな違いがあるのだろうか。刑事手続にくわしい小笠原基也弁護士に聞いた。