この事例の依頼主
50代 男性
相談前の状況
後遺障害認定結果上は鎖骨の変形癒合のみを対象としたものであったため、保険会社側からは後遺障害逸失利益は存在しないと主張されていた。
解決への流れ
事案の性質上、訴訟での解決を図るべきと判断し、速やかに提訴した。訴訟内でも逸失利益が激しく争われたが、主治医の意見書により変形癒合に伴う神経症状や可動域制限の存在を精緻に主張立証することで逸失利益の存在と賠償の必要性を訴え、当初の保険会社提案を大きく超える金額での判決を得て解決となった。
骨折後の変形癒合や外貌醜状などは、裁判であっても逸失利益が認められにくい後遺障害なので、本件のように、交渉段階で保険会社が全く認めてこないというのもよくあることです。これらの後遺障害において逸失利益が認められるかどうかは、後遺障害の部位や仕事の内容、変形等以外に痛みなどの神経症状の残存がどの程度あるのか、といった様々な要素を検討したうえで、適切な立証を心がける必要があります。本件では、これらを検討し認められる可能性があると判断できた事案なので提訴しましたが、肯定的な判断ができる事案ばかりではありません。訴訟しても逸失利益性が否定される、というケースも当然あり得るところです。また、訴訟では、その性質上スピード感を持った解決に期待できなくなる、というのもデメリットです。本件では、第一審判決の確定により、提訴から約1年での解決となりましたが、もし保険会社側の控訴等があればさらに解決までの時間を要していたことでしょう。このように、その性質上、訴訟という選択肢はご依頼者にそれなりの負担を強いるもののです。提訴に踏み切るかどうかは、慎重に考えるべきといえます。今回のケースは、訴訟で大成功に終わった事案でしたが、今後も、ご依頼者に提訴するかどうかの重要な判断をしていただく際には、できるだけ正確な見込みをお伝えし、その判断をサポートしていくことを心がけたいと思います。