この事例の依頼主
60代 男性
相談前の状況
相談者は、ある会社を定年退職まで勤め上げ、その後も嘱託社員として再雇用されていましたが、同僚と社内で喧嘩を起こしたことを理由に解雇されました。この喧嘩は、同僚の方から暴行を加えてきたものであるにもかかわらず、会社は喧嘩両成敗の名のもとに相談者を解雇していたため、処分に納得のいかない相談者は、解雇の無効を求め、裁判所に労働審判を申し立てることになりました。
解決への流れ
労働審判においては、相談者は暴行の被害者であり、同僚に対する抵抗は自身の身を守るためのものであり全く違法性はなく、就業規則に定められている解雇事由には該当しないことを丁寧に説明しました。また、相談者はこれまで社内で全く問題行動を起こしたことがなく、いきなりの解雇処分は重すぎることや、その言い分を全く聞かずに解雇処分に至った社内手続にも問題があることを主張していきました。労働審判委員会には当方の主張を概ね理解いただけましたが、解雇を無効として復職することは精神的にも困難を伴うため、解雇を合意退職に変更し、一定の解決金を会社に支払わせることでの解決を図りました。解雇事由が全く認められない事案であったため、話し合いの結果、約1年4か月分という多額の解決金を獲得することができました。
雇用関係は一人の人間が社会生活を維持していくために不可欠なものですから、解雇は無条件に認められるものではなく、客観的に合理性があり、かつ、社会通念上も相当であることが必要とされています。本件のように、社内での喧嘩を理由に解雇された場合など、ご自身にも一定の非がある場合にはなんとなく解雇をやむを得ないものと考えてしまったり、また、その処分を争うことに引け目を感じてしまうこともあるかもしれません。ただ、一般的にはいきなりの解雇が有効とされることは稀ですので、ご自身に対する処分が重いとお感じになった際は、是非一度ご相談ください。