この事例の依頼主
30代 女性
相談前の状況
夫、長男(3歳)、夫の母と同居する女性から相談を受けました。相談者が生活上のストレスから不倫をしてしまい、それが夫に発覚して厳しく責め立てられており、近いうちに長男を連れて別居する予定。離婚したいが、何人かの弁護士に相談したところ、全員から「あなたが不倫をしたのだから離婚は無理です」と言われてしまい途方に暮れているとのことでした。しかし、詳しく話を聞いたら、不倫が発覚した後、相談者は夫からかなりの精神的虐待、性的虐待を受けており、相談者が別居を決意した直接の原因は、むしろ夫の虐待にあるようでした。そのため、私は、別居した後に婚姻費用分担調停を申し立て、その後、離婚請求をすることを勧め、そうすることになりました。
解決への流れ
婚姻費用の調停では、夫は「不倫して出て行ったのだから婚姻費用を支払う義務はない」と主張して譲らず、審判により、算定表どおりの金額が認められました。それよりも重要だったのは、審判で「婚姻破綻の原因は妻の不貞が発覚したことを契機として、夫が妻を精神的に追い詰めたことにある」と明記されたことでした。離婚調停も不成立となり、離婚訴訟を提起して、離婚、慰謝料、財産分与、子の親権、養育費の請求をしたところ、夫は反訴を提起して、離婚、慰謝料600万円、財産分与の請求をしました。1審の結果は、離婚を認め、双方の慰謝料請求を棄却、財産分与も双方ともになし、子の親権者は妻、養育費は算定表どおり、というものでした。財産分与について納得できなかったため、控訴したところ、控訴審では、妻の財産分与請求を認め、その他の点は1審と同じでした。
不倫した側からの離婚請求は簡単ではありませんが、それだけで諦める必要はないということです。本件では、夫が厳しいルールを定め、それを破ったら違約金何百万円という誓約書を書かされ、それを根拠に夫は慰謝料600万円の請求をしてきたのですが、裁判所はその誓約書の効力も否定しました。相談者から詳細な事実を聞き出し、それを裏付ける証拠を出してもらえたので、満足できる結果を得ることができました。