この事例の依頼主
60代 女性
相談前の状況
ご相談者であるAさんは、普段疎遠になっていた父親が死亡したという知らせを受けました。兄弟姉妹との関係も悪いので、相続にあたって必要な情報がなく、遺産・財産の内容が分からない、遺言があるかどうかも分らないという相談を受けました。故人には不動産資産もありました。
解決への流れ
このケースは財産がどの程度わかりませんから、財産調査を行う必要がありました。また、今ある財産という観点だけでなく、これまで預貯金がどのように、誰によって扱われたかも明瞭にする必要がありました。相続に関する調査を開始するにあたり、相続関係を証する書類(戸籍謄本等)と住所関係の証明(住民票事項記載事項証明書等)を取得したうえで、法務局の「法定相続情報証明制度」の手続を利用して、認証文が付された「法定相続情報一覧図の写し」を数通取得することを勧めました。不動産の調査と法定相続情報一覧図に関する申請は、司法書士の方に委託しました。そのうえで、Aさんに、預貯金の取引履歴の調査方法と、遺言書の有無についての調査方法を教示しました。預貯金は、心当たりがある銀行・支店を全て調査すること、被相続人死亡日の残高証明書ではなく、預貯金の取引履歴(できれば現在から過去10年間程度)を取得するよう勧めました。
相続紛争が生じる事案では、もともと相続人間に疎遠や不和があるため、相互の連絡交渉が乏しく、相続に関係する情報が一部の相続人に偏在している事例が多い実情にあります。情報量が少ない相続人にとって、この情報偏在というハンディキャップを克服する必要に迫られるわけです。取得したい情報の範囲としては、遺産の内容のほか、遺言の有無、生前贈与の有無、他の親族等による遺産の費消・隠匿の有無など多岐に及びます。平成29年5月から法務局において運用が開始された「法定相続情報証明制度」を利用し、登記官の認証文が付された「法定相続情報一覧図の写し」を取得しておくと、多くの手続に利用することができます。